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この記事の結論
- EUには、株主権利指令(SRD II)という法律があり、証券会社などの仲介機関に、株主が議決権を行使できるよう手助けする義務を課しています
- 手助けの方法は2通りです。①株主自身(または指名した第三者)が議決権を行使できるように手配する、②株主の指示を受けて仲介機関が代わりに行使するのいずれかです
- 手数料を取ること自体は禁止されていませんが、公に開示すること・実費に見合った金額にすることが法律で求められています
- サクソバンク証券は、議決権行使の手助けを有料の「議決権行使代行サービス」として提供しています。公式の料金表では、サービス申込が年33ユーロ、投票は取引所ごとに1票あたり英国11ポンド・スイス66フラン・フランス66ユーロ・デンマーク110クローネなどです(2026年9月30日確認)
欧州株を保有していると、証券会社から「株主総会の議決権行使について」といった案内が届くことがあります。日本株では馴染みのない場面かもしれません。国外に住む個人株主が、海外の証券会社を通じて、EU企業の議決権を行使できるのか。できるとして、それは誰の義務で、費用はかかるのか。
この記事では、この手助けを証券会社に義務づけているEUの法律(株主権利指令、通称SRD II)の中身と、サクソバンク証券の取引約款に書かれている扱いを整理します。
SRD IIとは:仲介機関に議決権行使の手助けを義務づける法律
EUには、株主権利指令(Shareholder Rights Directive、SRD)という法律があります。2017年の改正(通称SRD II)で、証券会社や証券保管機関といった「仲介機関」に対して、株主が議決権などの権利を行使できるよう手助けする義務が加わりました。対象になるのは、EU加盟国に登記上の事務所を持ち、EU域内の規制市場に株式を上場している会社です。
この指令自体はEU域内の会社・仲介機関に向けたものですが、EU域外の仲介機関(この指令でいう「第三国の仲介機関」)が、対象企業の株式に関するサービスを提供する場合にも適用される、と定められています。
| 条文 | 内容 |
|---|---|
| 第3c条(議決権行使の円滑化) | 仲介機関は、株主が総会に出席し議決権を行使できるよう、①株主自身が行使できるよう手配するか、②株主の明確な指示を受けて仲介機関が代わりに行使するかのいずれかの方法で手助けしなければならない |
| 第3c条(投票の確認) | 電子的に投票した場合は受領確認を送ること。総会後、株主が求めれば、投票が有効に記録・集計されたことの確認を(原則3か月以内に)得られるようにすること |
| 第3d条(手数料の透明性) | 仲介機関は、この章にもとづくサービスの手数料を項目ごとに公に開示しなければならない。手数料は実際にかかる費用に見合った、差別的でない金額でなければならない。加盟国は、仲介機関が手数料を取ることを禁止することもできる |
手数料は取ってよいが、公開と実費相当が条件
この指令で押さえておきたいのは、「無料でなければならない」とは書かれていない点です。仲介機関が議決権行使の手助けに手数料を課すこと自体は認められています。ただし、次の2つの条件があります。
- 手数料を項目ごとに公に開示すること
- 実際にかかる費用に見合った、差別的でない金額であること(国内の株と国外の株とで金額に差をつける場合は、その差が実費の違いを反映した、正当な理由のあるものでなければならない)
なお、加盟国の判断で、仲介機関が手数料を取ること自体を禁止することもできる、とも定められています。実際に手数料がかかるかどうか、いくらかかるかは、会社ごと・国ごとに違いうるということになります。
保有している会社の議決権行使に対応しているか、費用がかかるかは、口座の画面で確かめられます。
欧州株1,800銘柄以上・9取引所に対応。特定口座あり、NISAは対象外です。最低手数料が効くため、少額の買付では負担率が上がります。
サクソバンク証券の扱い:有料サービスとして提供
サクソバンク証券の取引約款には、SRD IIに関する条項があります。次のように書かれています。
- 発行会社(またはその指名する第三者)から求められた場合、SRD IIで求められる範囲に限り、株式を保有する顧客の身元に関する情報を、遅滞なく発行会社に伝達する
- SRD IIに基づく範囲で、株主総会に関する情報や、株主向けの情報を、顧客(またはその指名する第三者)に遅滞なく送付する。情報が発行会社のウェブサイトで入手できる場合は、そのURLを知らせるだけでもよいとされている
- SRD IIで必要とされる範囲、および顧客の要求に応じて、株主総会への出席権や議決権の行使を円滑化する。この業務の詳細・条件は、同社ウェブサイト上の「議決権行使円滑化方針」に記載されている
サクソバンク証券の公式ページ「改正・株主権利指令の実施(SRD II)について」(2026年9月30日確認)によると、議決権行使の手助けは、議決権行使代行サービスという有料サービスとして提供されています。利用するには、取引プラットフォームから申し込みます。サービスを利用しない限り、お客様が特別な対応をする必要はない、とも書かれています。料金は次のとおりです(いずれも税込)。
| 項目 | 料金 |
|---|---|
| サービス申込 | 33ユーロ/年 |
| 投票・投票回答の変更 | 上場している取引所ごとに異なる。英国 11ポンド/1票、デンマーク 110デンマーククローネ/1票、スイス 66スイスフラン/1票、フランス 66ユーロ/1票 |
| 株主総会出席カード | 11ユーロ |
手数料は各四半期末に取引口座から差し引かれ、外貨は円に両替されるため、両替コストもかかります。申込料金と投票料金は返金不可で、四半期の途中で申込みや停止をしても、その四半期の全額が課金されると、公式ページに書かれています。なお、同じページには「1四半期あたり7.5ユーロ」という記載もあり、年33ユーロという表示(1四半期あたり約8.25ユーロ)とは合いません。この理由は、当サイトでは確認できていません。ドイツ・イタリア・スペイン・オランダなど、上の表に載っていない市場の投票料金も、確認できていません。
当サイトで確認できていないこと
- 公式の料金表に載っていない市場(ドイツ・イタリア・スペイン・オランダなど)の投票料金、および「年33ユーロ」と「1四半期あたり7.5ユーロ」という記載が合わない理由
- 議決権行使の申込みから反映までの具体的な手順・締切のタイミング
- EU域外(イギリス・スイスなど)に上場する企業の議決権行使が、同じ枠組みで扱われるか(SRD IIはEU加盟国に登記のある会社が対象)
- 実際に議決権を行使した場合の、会社側での取り扱いや反映の確からしさ
まとめ
- EUの株主権利指令(SRD II)は、証券会社などの仲介機関に、株主が議決権を行使できるよう手助けする義務を課している
- 手助けの方法は、株主自身が行使できるよう手配するか、仲介機関が指示を受けて代わりに行使するかのいずれか
- 手数料を取ることは禁止されていないが、公開すること・実費に見合った金額にすることが条件
- サクソバンク証券は、議決権行使の手助けを有料サービスとして提供している(申込年33ユーロ、投票は取引所ごとに1票あたり英国11ポンド・スイス66フラン・フランス66ユーロ・デンマーク110クローネなど。公式の料金表)
ここからは筆者の考えです。筆者はポルトガル在住で、IBKRの口座から欧州株ETFを中心に保有しています。議決権の行使は、配当のように毎年決まって起こる出来事ではないため、後回しにされがちな話題だと思います。ただ、「そもそも手続きできるのか」「費用がかかるのか」を法律の建て付けとして知っておくと、実際に総会の案内が来たときに慌てずに済むと思います。
議決権行使の扱いを知ったうえで欧州株を持つなら、口座の種類と開設までの流れを先に見ておけます。
口座の種類と開設までの日数は当サイトの解説記事にまとめています。NISAは対象外です。
この記事の検証方法
- 【更新】2026年9月30日:サクソバンク証券の議決権行使代行サービスの料金・課金方法を、同社の公式ページ「改正・株主権利指令の実施(SRD II)について」(home.saxo/ja-jp/legal/amendment/srdii)で確認し、追記しました。公開時(9月29日)は、有料とする情報を見つけただけで、公式の確認ができていなかったため、「金額は未確認」と書いていました
- SRD IIの内容は、EUR-Lexに掲載の指令2007/36/ECの統合版(2024年1月9日時点、EUR-Lexで確認できた最新の統合版)第3c条・第3d条で、2026年9月29日に確認しました
- サクソバンク証券の扱いは、同社の取引約款(2024年1月9日から適用)第18.4〜18.6条で確認しました
- 議決権行使の代行サービスが有料であることは、検索で確認できた第三者の情報にもとづいています。当サイトが同社の一次資料(議決権行使円滑化方針そのもの)を直接確認できたわけではなく、具体的な料金も未確認です
- 記載の内容は2026年9月29日時点のものです
- 筆者はポルトガル在住で、インタラクティブ・ブローカーズ(IBKR)の口座から欧州株ETFを中心に保有しています
この記事を書いた人:Kawa
ポルトガル在住30代の兼業投資家です。インタラクティブ・ブローカーズ(IBKR)の口座で、欧州株ETFを中心に保有しています。ヨーロッパには、日本ではあまり知られていなくても、世界中で愛されている会社がたくさんあります。その面白さと、日本からの買い方を、できるだけ分かりやすくお伝えしたいと思って書いています。株価の見通しは、根拠と計算式を示して書きます。確認できていないことはそう書き、誤りがあれば訂正の経緯を記事に残して直します。詳しいプロフィール
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免責事項
本記事は情報提供を目的としたものであり、特定のサービスの利用を推奨するものではありません。記載の内容は2026年9月29日に当サイトがEUの法令および証券会社の取引約款で確認したものにもとづいており、変更される場合があります。本記事は法務のアドバイスではありません。投資の最終判断はご自身の責任でお願いいたします。当サイトは本記事の情報に基づく損失について一切の責任を負いません。

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