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この記事の結論
- EUでは、ある会社の株を大きく空売りしている人は、発行済み株式の0.5%に達すると、名前と規模を一般に公表しなければなりません。その後も0.1%動くごとに公表が必要です
- 監督当局への報告は、もっと手前の0.1%から始まります(2022年に0.2%から引き下げ)
- 公表された内容は、各国の当局が運営・監督するサイトで、だれでも無料で見られます。ドイツは連邦官報のサイトに検索ページがあります
- 株を借りる手当てのない空売りは禁止です。市場が大きく揺れたときは、当局が空売りそのものを一時的に禁止・制限できます
保有している株が急に下がったとき、「大口の空売りが入っているのでは」と気になることがあります。EUには、大きな空売りの持ち高を公表させる決まりがあり、個人でも無料で調べられます。
この記事では、EUの空売り規則の原文をもとに、公表の基準、調べ方、読むときの注意点を整理します。空売りの多い・少ないから株価の先行きを判断する記事ではありません。
EUの空売り規則:報告と公表の2段階
根拠は、2012年3月14日のEU規則(236/2012)です。EU域内の取引の場で取引されている株について、空売りの持ち高(買い持ちと差し引きした正味の持ち高)が大きい人に、次の義務を課しています。
| 段階 | 基準(発行済み株式に対する割合) | 相手 |
|---|---|---|
| 監督当局への報告(第5条) | 0.1%に達したとき。以後0.1%ごと | その株を管轄する国の当局(一般には公表されない) |
| 一般への公表(第6条) | 0.5%に達したとき。以後0.1%ごと。基準を下回ったときも対象 | 一般の投資家 |
当局への報告の基準は、もともと0.2%でした。2021年9月27日の委任規則(2022/27)で0.1%に引き下げられています。EUの証券市場の監督機関であるESMAのサイトも、現在の基準を「報告は0.1%、公表は0.5%」と案内しています。
公表の中身は、規則の第9条で決まっています。
- 持ち高を持っている人(会社)の名前
- 持ち高の大きさ
- 対象の会社
- 持ち高ができた日、変わった日、なくなった日
持ち高は、取引日の終わりの午前0時の時点で計算します。なお、値付け業者(マーケットメーカー)としての取引は、報告と公表の対象から外れています(第17条)。
どこで見られるか
規則は、公表された情報を「各国の当局が運営または監督する中央のサイト」に載せるよう求めています。各国のサイトのアドレスはESMAに届けられ、ESMAが自分のサイトにリンクを載せる決まりです。
当サイトで実際に開いて確認できたのは、ドイツのページです。連邦官報(Bundesanzeiger)のサイトに「Net short positions」というページがあり、英語でも使えます。同サイトは、個別の公表を無料で検索できると案内しています。
どの国のサイトに載るかは、その株を管轄する当局がどこかで決まります。会社の国と上場の国が違う銘柄(ISINの記事で紹介しています)では、思っていた国のサイトに見つからないこともありえます。銘柄ごとの管轄の決まり方と、ドイツ以外の国のサイトの使い勝手は、当サイトでは確認できていません。
大口の空売りは、当局のサイトで無料で調べられます。気になる銘柄が取引できるかを、口座の画面で確かめられます。
欧州株1,800銘柄以上・9取引所に対応。特定口座は使えますが、NISAの対象外です。手数料は取引所ごとに最低額があり、少額の買付では負担率が上がります。
空売りそのものへの制限
株の手当てのない空売りは禁止
規則の第12条は、株を空売りできる場合を3つに限っています。すでに株を借りている場合、借りる契約などを結んでいる場合、そして第三者が株の所在を確認し、受渡しの日に決済できる見込みが立っている場合です。どれにも当たらない、いわゆる「裸の空売り」はできません。
非常時には、当局が一時的に禁止できる
第20条は、金融の安定や市場の信頼を大きく脅かす出来事があったとき、各国の当局が空売りを禁止したり、条件を付けたりできると定めています。対象には、空売りそのものだけでなく、値下がりで利益が出るほかの取引も含まれます。
個人投資家が欧州株の値下がりで利益をねらう手段としては、CFDが使われることがあります。CFDは元本を超える損失が出るおそれのある取引で、上のような一時的な制限の対象にもなりえます。
公表データを読むときの注意
- 見えるのは0.5%以上の持ち高だけ。0.5%に届かない空売りがどれだけあっても、一般には公表されません。公表分の合計は、空売り全体の一部です
- 値下がりへの賭けとは限らない。正味の持ち高で計算されますが、ほかの会社の株や、対象外の商品と組み合わせた取引の一部である場合もあります。公表データだけでは、ねらいまでは分かりません
- イギリスとスイスは別の制度。イギリスはEUを離脱しており、スイスはEUの加盟国ではありません。両国の現在の決まりは、当サイトでは確認できていません
筆者はIBKRの口座で欧州株ETFを中心に保有しています。空売りの公表データは、値動きの理由を後から確かめる材料の1つにはなると思います。ただ、それだけで売買を決められるほどの情報ではないと考えています。会社の決算や配当の方針とあわせて見るのがよいと思います。
まとめ
- EUでは、空売りの正味の持ち高が発行済み株式の0.1%で当局へ報告、0.5%で一般に公表。以後は0.1%ごと
- 公表されるのは、持っている人の名前、規模、対象の会社、日付
- 各国の当局が運営・監督するサイトで無料で見られる。ドイツは連邦官報のサイトで検索できる
- 株の手当てのない空売りは禁止。非常時には当局が空売りを一時的に禁止・制限できる
- 公表されるのは0.5%以上の分だけ。ねらいまでは分からない
確かめたい銘柄が見つかったら、口座開設の流れを先に見ておけます。
口座の種類と開設までの日数は当サイトの解説記事にまとめています。NISAは対象外です。
調べた銘柄を実際に現物で買う場合の証券会社の選び方は、欧州株が買えるネット証券を比較した記事にまとめました。
この記事の検証方法
- EUR-Lexに掲載の規則(EU)236/2012の第5条・第6条・第9条・第12条・第17条・第20条を2026年9月19日に当サイトが確認しました
- 報告の基準の引き下げは、委任規則(EU)2022/27(2021年9月27日)で確認しました
- 現在の基準は、ESMAのShort sellingのページでも確認しました
- あわせて、改正を反映した統合版(2024年1月16日時点)でも、報告0.1%・公表0.5%という基準を確かめました
- ドイツの公表ページは、連邦官報のNet short positionsを開いて確認しました。個別の銘柄の検索結果までは確認していません
- 記載の内容は2026年9月19日時点のものです
- 筆者はポルトガル在住で、インタラクティブ・ブローカーズ(IBKR)の口座から欧州株ETFを中心に保有しています
この記事を書いた人:Kawa
ポルトガル在住30代の兼業投資家です。インタラクティブ・ブローカーズ(IBKR)の口座で、欧州株ETFを中心に保有しています。ヨーロッパには、日本ではあまり知られていなくても、世界中で愛されている会社がたくさんあります。その面白さと、日本からの買い方を、できるだけ分かりやすくお伝えしたいと思って書いています。株価の見通しは、根拠と計算式を示して書きます。確認できていないことはそう書き、誤りがあれば訂正の経緯を記事に残して直します。詳しいプロフィール
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免責事項
本記事は情報提供を目的としたものであり、特定の銘柄の売買や空売りを推奨するものではありません。記載の内容は2026年9月19日に当サイトがEUの法令と公的機関のサイトで確認したものにもとづいており、変更される場合があります。CFDなどのレバレッジ取引は、元本を超える損失が生じるおそれがあります。投資の最終判断はご自身の責任でお願いいたします。当サイトは本記事の情報に基づく損失について一切の責任を負いません。

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