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この記事の結論
- EUでは、自社株買いが市場をゆがめないよう、買い方に決まりがあります。決まりを守った自社株買いは、相場操縦などを禁じる規則の適用の除外を受けられます
- 主な条件は、事前の開示、1日に買う量は平均出来高の25%まで、直近の独立した取引より高い値段では買わないことです
- 買った内容は、約定から7取引日以内に当局へ報告し、公表します。会社のIRサイトで追えます
- 発表された金額や株数は上限です。25%の制限があるため、大きな計画は買い終わるまでに時間がかかります
決算の発表で、「最大〇億ユーロの自社株買いを実施」という文字を見かけた。ありがたい話のようにも思えますが、いつ、どれだけ買うのかまでは、見出しからは分かりません。
欧州では、自社株買いのやり方が、EUの規則で細かく決まっています。この記事では、その規則の原文で確認した内容と、ドイツの株式法の例を整理します。自社株買いが株価を押し上げるかどうかを論じる記事ではありません。
EUの決まり:「適用の除外」を受けるための7つの条件
根拠は、市場濫用規則(596/2014)の第5条と、その細目を定めた委任規則(2016/1052)です。会社が自社株を買う行為は、相場を動かしやすいため、本来は市場濫用の禁止規則の対象になりえます。次の条件をすべて満たした自社株買いは、この禁止の適用の除外を受けられると、第5条は定めています。
| 項目 | 決まりの内容 |
|---|---|
| 事前の開示 | 買い始める前に、目的、上限の金額、上限の株数、期間を公表する。変更があれば、それも公表する |
| 目的の限定 | 目的は次の3つだけ。①資本を減らすため、②株に交換できる債券の義務を果たすため、③従業員や役員への株式の付与などの義務を果たすため |
| 買う場所と時間 | 株が上場している取引の場で買う。オークションの最中には注文を出さない |
| 値段の上限 | 直近の独立した取引の値段と、そのときの独立した最高の買い注文の値段の高いほうを超えない |
| 1日の量の上限 | 1日に買う量は、その取引の場での平均出来高の25%まで。平均は、開示の前月の出来高、または直前20取引日の出来高で計算する |
| してはいけないこと | 計画の期間中に自社株を売らない。決算発表前の30日間(クローズド期間)は買わない。内部情報の開示を遅らせている間は買わない。ただし、買う日や量があらかじめ決まっている計画や、証券会社が会社から独立して判断する計画には、この制限は適用されない |
| 報告と公表 | すべての買付を、約定日から7取引日目の終わりまでに、当局へ詳細と合計の形で報告し、公表する。公表した内容は、会社のサイトに5年以上載せる |
大事なのは、これが「除外を受けるための条件」だという点です。条件を満たさない自社株買いが、それだけで直ちに違法になるとは、規則は書いていません。除外を受けられなくなり、通常の市場濫用のルールで判断されることになります。
会社法の側にも上限がある:ドイツの例
市場の規則とは別に、各国の会社法が、自社株を買える場合を決めています。ドイツの株式法第71条は、自社株を買えるのは限られた場合だけだと定め、その1つが株主総会の授権にもとづく買付けです。この授権には次の決まりがあります。
- 授権の有効期間は最長5年
- 最低と最高の価格を定める
- 買える株数は、資本の10%を超えてはならない
- 取引そのものを目的とした買付けは認められない(銀行などには別の定めがあります)
つまり、ドイツの会社が「自社株買いをします」と言うとき、その背景には、株主総会が許可した範囲があります。フランスやオランダなど、ほかの国の会社法の上限は、当サイトでは確認できていません。
自社株買いの進み具合は、会社のIRサイトの開示で、約定から7取引日以内に追えます。気になる会社が取引できるかは、口座の画面で確かめられます。
欧州株1,800銘柄以上・9取引所に対応。特定口座あり、NISAは対象外です。最低手数料が効くため、少額の買付では負担率が上がります。
発表された金額は「上限」で、買い終わるには時間がかかる
事前に公表するのは「上限の金額と株数」です。買い切るとは限りません。さらに、1日に買える量は平均出来高の25%までなので、大きな計画ほど時間がかかります。仮の数字で考えてみます。
- ある株の平均出来高が1日100万株だとします
- 会社が1日に買える上限は、その25%の25万株です
- 計画の上限が1,000万株なら、上限いっぱいで買っても、最低でも40取引日(約2か月)かかります
これは決まりから計算した仮の例で、実在の会社の数字ではありません。出来高の小さい株ほど、同じ株数に、より長い日数がかかります。
追いかけるなら、会社のIRサイトを見る
買付の内容は、7取引日以内に公表され、会社のサイトに5年以上載せられます。当サイトで確認できた範囲では、リンツのIRサイトのメニューに「Share buyback」があり、シンドラーのIRサイトには、記名株と参加証券の自社株買いの報告のページがありました。探し方は、IRサイトの読み方の記事で説明しています。
ここからは筆者の考えです。筆者はポルトガル在住で、IBKRの口座から欧州株ETFを中心に保有しています。自社株買いは、配当とは別の株主還元の方法ですが、発表の数字だけでは、実際にいつ、どれだけ進むのかは分かりません。上限の性格と、25%の制限を知っておくと、見出しの数字を落ち着いて読めると思います。自社株買いの効果や、株価への影響については、当サイトでは調べていません。
当サイトで確認できていないこと
- ドイツ以外の国(フランス、オランダ、イギリスなど)の会社法上の上限
- スイスなど、EU以外の国の決まり
- 各社の自社株買いが、実際にこの除外の条件を満たしているかどうか
- 自社株買いに応じた場合の、日本での税金の扱い
まとめ
- EUの自社株買いは、条件を満たすと、市場濫用の禁止規則の適用の除外を受けられる
- 条件は、事前の開示・目的の限定・値段の上限・1日の量は平均出来高の25%までなど
- 買付は約定から7取引日以内に公表される。会社のIRサイトで追える
- 発表の金額は上限。25%の制限で、買い終わるまでに時間がかかる
- ドイツの会社は、株主総会の授権(最長5年・資本の10%まで)の範囲で買う
自社株買いの仕組みが分かったら、気になる会社の手数料と取扱いを、実際の画面で見ておけます。
口座の種類と開設までの日数は当サイトの解説記事にまとめています。NISAは対象外です。
自社株買いのルールを踏まえて個別銘柄を買う場合の証券会社の選び方は、欧州株が買えるネット証券を比較した記事で整理しています。
この記事の検証方法
- 自社株買いの除外の条件は、EUR-Lexに掲載の規則(EU)596/2014の統合版(2026年6月5日時点)第5条と、委任規則(EU)2016/1052第2〜4条で、2026年9月22日に当サイトが確認しました。委任規則の統合版は、2016年6月30日の1版だけで、改正は確認されませんでした
- ドイツは、連邦司法省の法令サイトの株式法(AktG)第71条で確認しました
- リンツとシンドラーのIRサイトの内容は、当サイトが2026年9月19日に各社のページを開いて確認しました
- 1,000万株の例は、決まりから当サイトが計算した仮の数字です
- 記載の内容は2026年9月22日時点のものです
- 筆者はポルトガル在住で、インタラクティブ・ブローカーズ(IBKR)の口座から欧州株ETFを中心に保有しています
この記事を書いた人:Kawa
ポルトガル在住30代の兼業投資家です。インタラクティブ・ブローカーズ(IBKR)の口座で、欧州株ETFを中心に保有しています。ヨーロッパには、日本ではあまり知られていなくても、世界中で愛されている会社がたくさんあります。その面白さと、日本からの買い方を、できるだけ分かりやすくお伝えしたいと思って書いています。株価の見通しは、根拠と計算式を示して書きます。確認できていないことはそう書き、誤りがあれば訂正の経緯を記事に残して直します。詳しいプロフィール
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免責事項
本記事は情報提供を目的としたものであり、特定の銘柄の売買を推奨するものではありません。記載の内容は2026年9月22日に当サイトがEUとドイツの法令で確認したものにもとづいており、変更される場合があります。本記事は法務・税務のアドバイスではありません。投資の最終判断はご自身の責任でお願いいたします。当サイトは本記事の情報に基づく損失について一切の責任を負いません。

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