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この記事の結論
- イギリス株の通常の配当には源泉徴収がありません。ただしREIT(不動産投資信託)が賃貸事業の利益から払う配当「PID」は、20%が差し引かれます
- REITの配当は「PID」と「PID以外」に分かれることがあります。ランドセックの2026年1月の中間配当19.00ペンスは、PIDが13.60ペンス、PID以外が5.40ペンスでした
- 英国歳入関税庁の一覧では、日本居住者のPIDに対する条約の税率は10%です。20%との差の10%は、様式「UK-REIT DT-Individual」で請求できます
- 請求には、日本の税務当局による居住の証明が必要です
当サイトでは、欧州の中でイギリス株の配当は現地の税金が最も軽い(通常の配当に源泉徴収なし)とお伝えしてきました。これは普通の会社の配当については正しいのですが、例外があります。不動産を持って賃貸するREITの配当です。
この記事では、英国歳入関税庁(HMRC)の手引きと様式、租税条約の一覧で仕組みを確認し、イギリスの不動産会社でREITのランドセックの決算発表で、実際の配当がどう分かれているかを見ていきます。
REITの配当だけ20%引かれる理由
イギリスのREIT制度では、不動産の賃貸事業で得た利益に会社の段階では税金をかけず、投資家に分配した段階で課税します。HMRCの手引きには、賃貸事業の利益から払う分配は「基本税率で所得税を差し引いて支払う」と書かれています。この分配が「PID(Property Income Distribution)」です。
| 配当の種類 | 何から払われるか | イギリスでの源泉徴収 |
|---|---|---|
| PID | 非課税とされた不動産賃貸事業の利益・譲渡益 | 基本税率20%を差し引いて支払う |
| PID以外の配当 | 課税される他の事業の利益など | 通常の会社配当と同じ扱い(源泉徴収なし) |
HMRCの手引きの例では、1株1ポンドのPIDを100株分受け取る場合、株主に80ポンドが支払われ、20ポンドはHMRCに納められます。どの部分がPIDで、いくら差し引かれたかは、REITが株主に出す配当の通知に明記されるとされています。
ランドセックの決算発表にも、REITとして非課税の所得の90%をPIDとして分配する必要があると書かれています。賃貸収入が中心の会社ほど、配当の大部分がPIDになる仕組みです。
ランドセックの配当はPIDとPID以外に分かれていた
ランドセック(Land Securities Group)の2026年3月期の決算発表(2026年5月14日)には、配当ごとにPIDとPID以外の内訳が載っています。
| 対象の期 | 支払日 | PID | PID以外 | 合計 |
|---|---|---|---|---|
| 2025年3月期 第1回中間 | 2024年10月4日 | 9.20ペンス | — | 9.20ペンス |
| 2025年3月期 第2回中間 | 2025年1月8日 | — | 9.40ペンス | 9.40ペンス |
| 2025年3月期 第3回中間 | 2025年4月11日 | 9.50ペンス | — | 9.50ペンス |
| 2025年3月期 期末 | 2025年7月25日 | 12.30ペンス | — | 12.30ペンス |
| 2026年3月期 中間 | 2026年1月9日 | 13.60ペンス | 5.40ペンス | 19.00ペンス |
| 2026年3月期 期末(提案) | 2026年7月24日(予定) | 22.20ペンス | — | 22.20ペンス |
同じ会社でも、全額PIDの回、全額PID以外の回、両方が混ざる回があることが分かります。配当利回りだけを見ていると、この違いは見えません。
2026年3月期の合計41.2ペンスで試算すると、PIDは35.8ペンスです。20%の7.16ペンスが差し引かれるので、配当全体に対するイギリスでの源泉徴収は約17.4%になります。後で説明する請求で条約の10%まで戻せた場合は、3.58ペンス、配当全体の約8.7%まで下がる計算です。
REITの配当は20%引かれ、あとから10%が還付されることがあります。持ちたいイギリスの銘柄が取引できるかを、先に確かめられます。
欧州株1,800銘柄以上・9取引所に対応。特定口座は使えますが、NISAの対象外です。手数料は取引所ごとに最低額があり、少額の買付では負担率が上がります。
日本居住者は条約の10%を超えた分を請求できる
HMRCが公表している租税条約の一覧(Digest of Double Taxation Treaties)では、日本の欄の「PID」の税率は10%です。一覧の説明によると、税率が示されている場合は、基本税率20%のうちその率を超えた部分が請求の対象になります。日本居住者なら、PIDの10%分です。
一覧には、日英条約の議定書がPIDについて2015年1月1日から英国で効力を持つこと、条約の特典は条約第22条の「適格者」に限られることも注記されています。
請求に使うのは、個人向けの様式UK-REIT DT-Individualです。様式と説明書(説明書は2026年7月21日更新)から、手順をまとめます。
| 手順 | 内容 |
|---|---|
| 1. 配当を受け取る | 様式は、PIDを受け取った後でないと記入できない |
| 2. 様式に記入する | 個人情報、居住国での納税の状況、受け取ったPIDの額と差し引かれた税額を書く。PID以外の配当や他の所得は含めない |
| 3. 居住国の税務当局の証明を受ける | 記入した様式を居住国の税務当局に送り、条約上の居住者であることを証明してもらう。当局はHMRCに直接送るか、本人に返送する。当局が様式に押印しない場合は、条約上の居住者であることを示す書面を添付する |
| 4. HMRCへ送る | 送付先は HMRC, Trusts, BX9 1EL(イギリス) |
| 書類の保管 | REITの配当の通知(税額の証明)は同封しなくてよいが、求められたときのために保管する |
この手続きで気になるのは、手順2で書くPIDの額と差し引かれた税額です。本来はREITの配当通知で確認するものですが、証券会社を通じて保有していると、その通知が直接は届かないことがあります。サクソバンク証券の明細にPIDかどうか、いくら差し引かれたかが表示されるかは、当サイトでは確認できていません。
また、請求の期限と、日本の確定申告でPIDがどう扱われるかも、当サイトでは確認できていません。欧州株の配当と外国税額控除の一般的な考え方は確定申告と外国税額控除の記事で扱っています。
イギリスの不動産株を買う前に確認したいこと
- その会社がREITかどうか:REITでなければ、通常の会社配当として源泉徴収はありません
- 配当ごとのPIDの割合:会社の決算発表や配当の発表に、PIDとPID以外の内訳が載っていることがあります
- 買うときの印紙税:イギリスの会社の株を買うときは0.5%の印紙税がかかります。詳しくは買付時の税金の記事をご覧ください
- 両替コスト:円口座では売買のたびに両替コストがかかります(両替コストの記事)
ここからは筆者の考えです。イギリスのREITは、「イギリス株だから配当に現地の税金はかからない」という前提が当てはまらない数少ない例だと思います。ランドセックの例では配当の9割近くがPIDなので、利回りで比べるときは、20%が引かれた後の手取りで見ておくほうが実態に近いと思います。
還付の請求は、日本の税務当局の証明を受けて英国に郵送する手間がかかります。10%分の金額と手間を比べて、保有額がまとまってから検討するくらいでよいのではないかと思います。不動産株そのものの見方は欧州の不動産株の記事で扱っています。
筆者自身はポルトガル在住で、インタラクティブ・ブローカーズ(IBKR)の口座から欧州株ETFを中心に保有しています。本記事の銘柄を保有しているとは限りません。
まとめ
- イギリス株の通常の配当は源泉徴収なし。ただしREITのPIDは20%が差し引かれる
- REITの配当はPIDとPID以外に分かれることがある。ランドセックの2026年1月の中間配当はPID13.60ペンス+PID以外5.40ペンス
- ランドセックの2026年3月期の配当全体では、イギリスでの源泉徴収は約17.4%の計算
- 日本居住者のPIDの条約税率は10%。差の10%は様式UK-REIT DT-Individualで請求でき、日本の税務当局の証明が必要
- 証券会社の明細にPIDの内訳が載るか、請求の期限、日本での扱いは未確認
確かめたい銘柄が見つかったら、口座開設の流れを先に見ておけます。
口座の種類と開設までの日数は当サイトの解説記事にまとめています。NISAは対象外です。
この記事の検証方法
- REITの配当の課税の仕組みは、HMRCの手引きIFM28005・SAIM5310・SAIM5330を2026年9月17日に当サイトが確認しました
- 請求の手順は、HMRCの様式UK-REIT DT-Individualのページに掲載された様式(HMRC 10/24)と説明書(HMRC 03/26)で確認しました
- 日本居住者のPIDの条約税率10%は、HMRCのDigest of Double Taxation Treaties(2018年4月版)の日本の欄によります
- ランドセックの配当の内訳は、同社の2026年3月期の決算発表(2026年5月14日)によります。約17.4%・約8.7%は当サイトの試算です
- 請求の期限、日本の確定申告でのPIDの扱い、サクソバンク証券の明細にPIDの内訳が表示されるか、ランドセック株をサクソバンク証券で買えるかは、当サイトでは確認できていません
- 本記事は制度の一般的な説明であり、税務アドバイスではありません。記載の内容は2026年9月17日時点のものです
- 筆者はポルトガル在住で、インタラクティブ・ブローカーズ(IBKR)の口座から欧州株ETFを中心に保有しています
この記事を書いた人:Kawa
ポルトガル在住30代の兼業投資家です。インタラクティブ・ブローカーズ(IBKR)の口座で、欧州株ETFを中心に保有しています。ヨーロッパには、日本ではあまり知られていなくても、世界中で愛されている会社がたくさんあります。その面白さと、日本からの買い方を、できるだけ分かりやすくお伝えしたいと思って書いています。株価の見通しは、根拠と計算式を示して書きます。確認できていないことはそう書き、誤りがあれば訂正の経緯を記事に残して直します。詳しいプロフィール
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免責事項
本記事は情報提供を目的としたものであり、特定の銘柄の売買を推奨するものではありません。本記事は制度の一般的な説明であり、税務アドバイスではありません。記載の税率・様式・手順・配当の内訳は2026年9月17日に当サイトが英国歳入関税庁の公式資料と会社の発表で確認した内容にもとづいており、制度の変更により内容が変わる場合があります。個別の申告・還付請求については、税理士や税務署、英国の税務当局に必ずご確認ください。証券会社の明細の表示については、お取引の証券会社に個別にご確認ください。投資の最終判断はご自身の責任でお願いいたします。当サイトは本記事の情報に基づく損失について一切の責任を負いません。

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