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この記事の結論
- EUでは、上場会社の議決権の5%・10%・15%・20%・25%・30%・50%・75%をまたいだ株主は、会社に届け出なければなりません。期限は4取引日以内です
- 届出を受けた会社は、3取引日以内に内容を公表します。つまり、大株主の動きは会社の発表で追えます
- 国によって基準はもっと細かくなります。ドイツは3%から、イギリスは3%から1%きざみです
- 買い増したときだけでなく、売って基準を下回ったときも届出の対象です。発表が多いこと自体は、異常ではありません
欧州株の会社のIRサイトを見ていると、「Voting rights announcement」「Stimmrechtsmitteilung」「Holding(s) in Company」といった題の短い発表が並んでいることがあります。これは、大株主の持ち分が一定の線をまたいだことを知らせる発表です。
この記事では、EUの透明性指令と、ドイツ・イギリスの決まりの原文をもとに、大株主の届出の仕組みを整理します。
EUの共通ルール:8つの基準
根拠は、EUの透明性指令(2004/109/EC)です。規制市場に上場する会社の、議決権の付いた株について、次のように定めています。
| 項目 | 指令の内容 |
|---|---|
| 基準(第9条) | 議決権の割合が5%、10%、15%、20%、25%、30%、50%、75%に達した、超えた、下回ったとき。買ったときだけでなく、売って下回ったときも対象 |
| 届け出る先 | その株を発行している会社 |
| 届出の期限(第12条) | できるだけ早く、遅くとも4取引日以内。取引を知った日の翌日から数える |
| 会社による公表(第12条) | 届出を受けてから3取引日以内に、届出の内容をすべて公表する |
割合は、議決権の付いたすべての株をもとに計算します。指令は、議決権の行使が止められている株も計算に入れると定めています。
国ごとの基準:ドイツは3%、イギリスは1%きざみ
指令が定めるのは最低限の線で、各国はそれより細かい基準を置いています。当サイトが条文で確認できた2か国を並べます。
| 国 | 基準 | 根拠 |
|---|---|---|
| EUの指令 | 5%、10%、15%、20%、25%、30%、50%、75% | 指令2004/109/EC 第9条 |
| ドイツ | 3%、5%、10%、15%、20%、25%、30%、50%、75%。会社と監督当局(BaFin)の両方へ、4取引日以内 | 証券取引法(WpHG)第33条 |
| イギリス | 3%、4%、5%…と1%きざみで100%まで(イギリス以外の会社は5%、10%、15%、20%、25%、30%、50%、75%) | 金融行為規制機構(FCA)の規則 DTR 5.1 |
イギリスの会社は、3%を超えた株主の持ち分が1%動くたびに発表が出ます。ロンドン上場の会社のIRサイトに「Holding(s) in Company」という発表が多いのは、このためです。フランス、オランダ、北欧など、ほかの国の基準は、当サイトでは条文で確認できていません。
大株主の動きは、会社のIRサイトで追えます。気になる会社が取引できるかを、口座の画面で確かめられます。
欧州株1,800銘柄以上・9取引所に対応。特定口座は使えますが、NISAの対象外です。手数料は取引所ごとに最低額があり、少額の買付では負担率が上がります。
ほかの開示制度とのつながり
大株主の届出は、当サイトで扱ったほかの制度とつながっています。持ち分が増えていく順に並べると、次のようになります。
| 議決権の割合 | 起きること |
|---|---|
| 3%(ドイツ・イギリス)、5%(EUの指令) | 大株主としての届出が始まる |
| 30%(ドイツ・イギリス) | 支配権を得たとみなされ、全株主への買付けが義務になる |
| 90%(ドイツは95%) | 残りの株主の株を強制的に買い取れる(スクイーズアウト) |
30%と90%の決まりは、欧州株が買収されたらどうなるかの記事で説明しています。反対に、値下がりを見込む側の開示は、空売りの公表ルールの記事にまとめました。買い持ちは3〜5%から、空売りは0.5%から公表されるので、空売りのほうがずっと小さい持ち高で名前が出ることになります。
個人投資家にとっての使いみち
- 調べる場所は、会社のIRサイト。届出の内容は会社が公表する決まりなので、IRサイトのニュースや法定開示の一覧に載ります
- 発表が多いことは、異常ではない。運用会社の持ち分が基準の前後を行き来するだけでも、そのたびに発表が出ます。とくにイギリスの会社は1%きざみなので、件数が多くなります
- 売買の理由は書かれていない。届出に載るのは持ち分の割合で、なぜ買ったのか、売ったのかは分かりません。指数に連動する運用の機械的な売買も含まれます
- 議決権の割合であって、株数の割合ではない。議決権の違う株を出している会社では、この2つが大きくずれます。仕組みは株の種類の早見表にまとめています
筆者はIBKRの口座で欧州株ETFを中心に保有しています。大株主の発表は、それだけで売買を決める材料にはなりにくいと思います。ただ、買収の前ぶれとして持ち分が積み上がっていく場合には、30%の線が近いかどうかを知る手がかりになると考えています。
まとめ
- EUの指令は、議決権の5%から75%まで8つの基準をまたいだ株主に、4取引日以内の届出を求めている
- 会社は届出を受けてから3取引日以内に公表する。調べる場所は会社のIRサイト
- ドイツは3%から、イギリスは3%から1%きざみ
- 30%で全株主への買付けが義務、90%(ドイツは95%)で強制買取りと、ほかの制度につながっている
- 届出に載るのは議決権の割合。売買の理由までは分からない
確かめたい会社が見つかったら、口座開設の流れを先に見ておけます。
口座の種類と開設までの日数は当サイトの解説記事にまとめています。NISAは対象外です。
大株主の開示を確認した銘柄を買える証券会社は、欧州株が買えるネット証券を比較した記事で比べています。
この記事の検証方法
- EUのルールは、EUR-Lexに掲載の指令2004/109/ECの第9条・第12条を2026年9月19日に当サイトが確認しました。あわせて、改正を反映した統合版(2024年1月9日時点)でも、基準と期限が変わっていないことを確かめました
- ドイツは、連邦司法省の法令サイトに掲載の証券取引法(WpHG)第33条で確認しました
- イギリスは、FCAハンドブックのDTR 5.1で確認しました
- 記載の内容は2026年9月19日時点のものです
- 筆者はポルトガル在住で、インタラクティブ・ブローカーズ(IBKR)の口座から欧州株ETFを中心に保有しています
この記事を書いた人:Kawa
ポルトガル在住30代の兼業投資家です。インタラクティブ・ブローカーズ(IBKR)の口座で、欧州株ETFを中心に保有しています。ヨーロッパには、日本ではあまり知られていなくても、世界中で愛されている会社がたくさんあります。その面白さと、日本からの買い方を、できるだけ分かりやすくお伝えしたいと思って書いています。株価の見通しは、根拠と計算式を示して書きます。確認できていないことはそう書き、誤りがあれば訂正の経緯を記事に残して直します。詳しいプロフィール
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免責事項
本記事は情報提供を目的としたものであり、特定の銘柄の売買を推奨するものではありません。記載の内容は2026年9月19日に当サイトがEUと各国の法令で確認したものにもとづいており、変更される場合があります。本記事は法務アドバイスではありません。投資の最終判断はご自身の責任でお願いいたします。当サイトは本記事の情報に基づく損失について一切の責任を負いません。

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