※本記事にはアフィリエイト広告(プロモーション)が含まれます。
この記事の結論
- EUの上場会社に法律で義務づけられている定期の決算は、年次と半期の年2回です。四半期の報告義務は、2013年のEU指令で廃止されました
- 廃止の理由としてEUは、中小の会社の負担が重いことと、短期の業績を意識させ、長期の投資を妨げることを挙げています
- ただし取引所が独自に求めることはできます。フランクフルトのプライム・スタンダードは、第1・第3四半期の報告を必須にしています
- ロレアルは、利益まで発表するのは年2回で、第1・第3四半期は売上高だけを発表しています。米国株や日本株と同じ感覚で「四半期ごとの利益」を待つと、情報が出てこないことがあります
米国株や日本株に慣れていると、決算は3か月ごとに出るものだと考えがちです。ところが欧州株では、第1四半期や第3四半期に「売上高だけ」を発表する会社や、短い事業の報告だけで済ませる会社が珍しくありません。
これは会社の姿勢の問題ではなく、EUの制度がそうなっているためです。この記事では、EUの指令の原文と、ドイツ取引所の規則、ロレアルの決算日程をもとに整理します。
EUのルール:義務は年次と半期の2回
EUの上場会社の情報開示は、透明性指令(2004/109/EC)で決まっています。2013年10月22日の改正指令(2013/50/EU)で、次のように変わりました。
| 報告 | 改正後の決まり |
|---|---|
| 年次の報告 | 会計年度の終わりから4か月以内に公表。少なくとも10年間は見られる状態にしておく |
| 半期の報告 | 期限を、期間の終わりから3か月以内に延長 |
| 四半期の報告(期中の経営報告) | 義務を廃止。加盟国は原則として、年次と半期より頻繁な定期の報告を国内法で義務づけてはならない |
廃止の理由は、指令の前文に書かれています。要旨は次のとおりです。
- 四半期の報告義務は、多くの中小の上場会社にとって重い負担で、投資家の保護に必要とは言えない
- この義務は短期の業績を意識させ、長期の投資を妨げる
- 持続的な価値の創造と、長期を見すえた投資を促すために、会社への短期的な圧力を減らすことが欠かせない
ただし例外も認められています。加盟国は、金融機関に追加の報告を求めることができます。また、取引所が、上場する会社に追加の定期報告を求めることもできると、前文は明記しています。
取引所が求める例:フランクフルトのプライム・スタンダード
その代表がドイツです。ドイツ取引所の案内によると、フランクフルト証券取引所の上場区分のうち、基準の厳しい「プライム・スタンダード」の会社には、次の義務があります。
- 第1四半期と第3四半期に、四半期の報告書(Quarterly Statement)をドイツ語と英語で作る(取引所規則 第53条)
- 期間の終わりから2か月以内に取引所へ提出する
- 会社が望めば、より詳しい四半期の財務報告書に代えてもよい
一方、もう1つの区分である「ジェネラル・スタンダード」の会社については、法律による期中の報告義務が2015年11月に廃止されたと、同じ案内に書かれています。つまりドイツでは、プライム・スタンダードに上場している会社であれば、四半期ごとに報告が出てきます。どの区分に上場しているかは、会社のIRサイトや取引所の銘柄ページで確認できます。ドイツの取引の仕組みはXetraの記事で扱っています。
決算が年2回の会社は、発表の日を前もって知っておけます。気になる会社の取扱いを、口座の画面で確かめられます。
欧州株1,800銘柄以上・9取引所に対応。特定口座は使えますが、NISAの対象外です。手数料は取引所ごとに最低額があり、少額の買付では負担率が上がります。
実例:ロレアルは「利益は年2回、売上高は年4回」
フランスのロレアルの2026年の日程を、同社の投資家向けサイトで確認しました。
| 日付 | 発表の内容 | 利益の発表 |
|---|---|---|
| 2026年2月12日 | 2025年の通期決算(Annual Results) | あり |
| 2026年4月22日 | 第1四半期の売上高(First Quarter 2026 Sales) | なし |
| 2026年7月29日 | 2026年の半期決算(Half-Year Results) | あり |
| 2026年10月22日 | 9月末までの売上高(Sales at September 30, 2026) | なし |
発表は年4回ありますが、利益まで分かるのは2月と7月の2回です。4月と10月は売上高の発表で、名前にも「Results(決算)」ではなく「Sales(売上高)」が使われています。
ほかの会社が期中にどこまで発表しているかは、会社ごとに違います。すべての会社を当サイトで確認できているわけではないため、気になる銘柄は、会社のIRサイトの「Financial calendar」をご覧ください。
個人投資家にとっての意味
- 利益の情報が半年空くことがある。その間は、売上高の発表や、会社が出す見通しの修正が主な手がかりになります
- 半期決算の重みが大きい。年に2回しか利益が出てこない会社では、1回の発表で株価が大きく動くことがあります
- データサイトの「四半期の利益」に空欄があっても、異常とは限らない。会社がそもそも発表していない可能性があります
- 発表の時期は国によって違う。当サイトの実測では、決算が集まる月は国ごとにずれていました。決算が集まる月を国別に調べた記事にまとめています
筆者はIBKRの口座で欧州株ETFを中心に保有しています。長く持つ前提であれば、決算が年2回でも困る場面は多くないと思います。EUが制度を変えた理由も、長期の投資を促すことでした。反対に、決算の前後で短期の売買をしたい場合は、発表の回数が少ないぶん、1回ごとの値動きが大きくなりやすい点に注意が必要だと考えています。
なお、イギリスはEUを離脱しており、この指令がそのまま適用されるわけではありません。イギリスの現在の決まりは、当サイトでは確認できていません。
まとめ
- EUの上場会社の定期の決算は、法律上は年次(4か月以内)と半期(3か月以内)の年2回
- 四半期の報告義務は2013年の指令で廃止。理由は、中小の会社の負担と、短期志向を強めること
- 取引所は独自に求められる。フランクフルトのプライム・スタンダードは第1・第3四半期の報告が必須(2か月以内)
- ロレアルは利益の発表が年2回、第1・第3四半期は売上高だけ
- 気になる銘柄は、IRサイトの決算日程で「何が発表されるか」まで確かめる
確かめたい会社が見つかったら、口座開設の流れを先に見ておけます。
口座の種類と開設までの日数は当サイトの解説記事にまとめています。NISAは対象外です。
決算のペースを知ったうえで欧州株を始める場合は、欧州株が買えるネット証券を比較した記事で証券会社の違いを確かめられます。
この記事の検証方法
- EUのルールは、EUR-Lexに掲載の指令2013/50/EU(2013年10月22日)の前文(4)〜(6)と、年次報告の期限を定めた条文を2026年9月19日に当サイトが確認しました
- プライム・スタンダードの義務は、ドイツ取引所のFollow-up Obligations Regulated Marketの「Quarterly Statement or Quarterly Financial Report」の章で確認しました
- ロレアルの日程は、同社のFinancial calendarで確認しました
- あわせて、改正を反映した透明性指令の統合版(2024年1月9日時点)で、年次の報告が4か月以内、半期の報告が3か月以内であることを確かめました
- 指令を各国がどのように国内法にしたかは、ドイツ取引所の案内にある範囲を除いて、当サイトでは確認できていません
- 記載の内容は2026年9月19日時点のものです
- 筆者はポルトガル在住で、インタラクティブ・ブローカーズ(IBKR)の口座から欧州株ETFを中心に保有しています
この記事を書いた人:Kawa
ポルトガル在住30代の兼業投資家です。インタラクティブ・ブローカーズ(IBKR)の口座で、欧州株ETFを中心に保有しています。ヨーロッパには、日本ではあまり知られていなくても、世界中で愛されている会社がたくさんあります。その面白さと、日本からの買い方を、できるだけ分かりやすくお伝えしたいと思って書いています。株価の見通しは、根拠と計算式を示して書きます。確認できていないことはそう書き、誤りがあれば訂正の経緯を記事に残して直します。詳しいプロフィール
あわせて読みたい
- 欧州株の自社株買いの決まり|1日の出来高の25%まで、7取引日以内に開示
- 欧州株は役員の売買も公表される|2万ユーロ超と決算前30日の禁止
- 欧州株の情報開示ルール早見表|決算・大株主・空売り・買収の4制度
- 欧州株の空売りは0.5%で公表される|大口の空売りを無料で調べる方法
- 欧州株を買う前に確認したい7つの制度|会社の国・株の種類・2つの税金
- 決算が集まる月は国で違う|ドイツは8月、フランスは10月
- Xetra(クセトラ)とは|ドイツ株が取引される電子市場の仕組み
- 欧州株の配当は権利落ちから何日で入るか|スイス2日、イギリスは1か月
免責事項
本記事は情報提供を目的としたものであり、特定の銘柄の売買を推奨するものではありません。記載の内容は2026年9月19日に当サイトがEUの法令、取引所と会社の公式資料で確認したものにもとづいており、変更される場合があります。本記事は法務アドバイスではありません。投資の最終判断はご自身の責任でお願いいたします。当サイトは本記事の情報に基づく損失について一切の責任を負いません。

コメント